★ 【
はやぶさ プロジェクト
】 後 編
カプセル より 小 惑
星 イトカワ から 持 ち 帰 っ た サンプル を 取 り 出 す 回 収 する 装 置
Jaxa 技 術 人 と 日 立 技 術 人 の 共 同 で 開 発 さ れ た Curation
★ イトカワ の 微 粒
子 分 析
イトカワ の サンプル カプセル から 1000 個 以 上 の 微 粒 子 が 採 取
されました
微 粒 子 は 国 内 公 募 に より 審 査 で 認 定 された 各 大 学 に 配 布
されました
さらに 国 際 公 募 で 審 査 に 認 定 された 世 界 の 研究所 に 配 布
されました
● 北海道 大学
北海道大学 の 圦本尚義教授らの グループ は 重さの異なる酸素原子(同位体)の存在比 を
調べました。
酸素は惑星を構成する主要な元素で、重さが異なる 3種類 の 同位体 をもち、それぞれの存在比率
は惑星ごとに異なります。
イトカワ微粒子と地球物質の酸素同位体比。地球上の物質とは異なることが分かる。(提供:北海道大学/JAXA)
● 東北 大学
東北大学 の 中村智樹准教授らのグループ は
電子顕微鏡 と X線回折技術 を 併 用
して、
微粒子を構成する鉱物の詳しい化学組成を調べました。その結果、カンラン石、輝石、斜長石、トロイライト(硫化鉄)、
テーナイト
(鉄ニッケル金属)、クロマイト などの 鉱物 により 微粒子が構成されている ことが分かりました。
この 鉱物 の
組み合わせは 地球 の 岩 石 にはなく、 普通 コンドライト 隕石特有 のものです。
白い粒(矢印)は泡が発生したあと 800℃まで加熱されたイトカワ微粒子 電子顕微鏡による画像( 提供:東北大学 )
イトカワ の
形成史 ( 提供: 東北大学 /J AXA )
これまでの分析によりイトカワの形成史が明らかになってきました。イトカワがたどった歴史は次のようなものです。(上図参照)
1
) 約 46 億年 前に太陽系 が 誕生した後、チリやガスなどの太陽系初期の物質が集まり、イトカワ の 母天体 ができる。
2 ) 母天体の大きさは 直径 20 km 以上で、内部は 800 ℃
ほどの高温に上昇した。その後、母天体はゆっくり 冷 え た。
3
) イトカワ の ほか の 小天体 が イトカワ の 母天体 に 衝 突 する。
4
) 衝突の衝撃で母天体は完全に破壊され バラバラ になる。
5 )
バラバラになった破片の一部が互いの重力で寄り集まり、イトカワが誕生する。
誕生直後のイトカワの表面は 宇宙風化 の 影 響 を
受けていないため、
現在より 明るく 白っぽい色 をしていた。
6 )
宇宙風化によって表面の色が次第に暗くなり、直径 約 500 m
の現在のイトカワとなる。
また、微粒子の元素組成の分析で分かったイリジウムの含有量から、イトカワには太陽系のごく初期の形成プロセスの痕跡が
残っていることも分かっています。
イトカワの微粒子の分析が進めば、イトカワの歴史だけでなく、約46億年前の太陽系の誕生やその進化過程の解明につながります
● 茨城 大学
茨城大学 の 野口高明教授 らの グループ は イトカワ
の 宇宙風化 を 調べるため、微粒子 を 樹 脂 で 固 め、
厚さ 約 0.1μm (1μm=0.001mm)ごとに スライ
スして、その 断 面 を電子顕微鏡 で 観 察 しました。
その結果、表面から深さ約 50nm(1nm=0.001μm) の 領 域
に、明るくて 白っぽく 見える点 が 多 数 見つかり、それが、
宇宙風化 によって 作られた 鉄 に 富む ナノ 粒子 (超微粒子) であることを 突き止 めました。
太陽風 の 中 の イオン粒子 が 高 速 で 表 面 に 衝 突 したときに、鉄
を 主成分 とする ナノ粒 子 ができたと
考えられて
います。
イトカワの表面の色合いが場所ごとに違うのは、この 鉄 を含む ナノ粒子
の 影 響 です。
コンドライト 隕 石 が宇宙風化 を 受けると、S型小惑星 と
同じスペクトル をもつようになるのです
微粒子 の 表面付近 を 観察する方法。微粒子をスライスしてその端を観察する。 (提供:茨城大学
中 図 の 白く見える点 は、宇宙風化 によって
作られた 鉄 に富む ナノ粒子
(提供:茨城大学
● 東京 大学
東京大学 の
長尾敬介教授らのグループによる分析により、イトカワの微粒子から太陽風に含まれるネオンなどの希ガスとその
同位体成分が太陽風とほぼ同じ比率で検出され、イトカワが宇宙風化を受けていたことを確認しました。
太陽風の希ガスは微粒子のごく表面にしか侵入できません。
その希ガスの量から、イトカワの最表面は、数百年~数千年の間、太陽風をあびていたことが分かりました。
この太陽風の影響でイトカワの表面が風化していったのです。
一方、太陽系外から飛んでくる宇宙線による影響は検出されませんでした。
宇宙線は、天体表面から深さ1m程度の範囲まで影響を与えるもので、その影響は表面が100万年以上の長期間にわたって
宇宙空間にさらされないと現れません。このことは、分析したイトカワの微粒子が数百万年以下しか表面近くに出ていないことを意味します。
さらに、微粒子がずっと表面にいたのではなく、内部に潜ったり現れたりしたことも突き止めました。
イトカワの表面の微粒子は、内部に潜ったり表面に現れたりしながら、最終的には、宇宙風化の影響で、
100万年ごとに 数 十 cm
以上の割合で、宇宙空間へ飛ばされていたことが推測されます。
つまりイトカワは、100万年に数十cmの割合で小さくなっているといえます。
現在イトカワの大きさは
直径 約 500 mですが、このまま表面が削れていくと、どんどん小さくなり、
約
10 億年後 に 消 滅 する 可能性 があります。
太陽 から 放
射 されたネオンが イトカワの粒子3個
(#0015、#0053、#0065)に存在する。(提供:東京大学/JAXA
● 首都大学 東京
首都大学東京 の 海老原充教授らのグループは 中性子放射化分析
で
微粒子全体の元素組成を調べました。
中性子放射化分析とは、サンプルに中性子を当てると出てくるごく弱い放射線を精密に測ることで、
どんな元素がどの程度含まれているかを知る手法です。
これらの分析によりイトカワは、普通コンドライト隕石の中でも特に、酸化的環境で形成されたLL型というタイプと
同じであることを突き止めました。酸化的環境とは、結晶に取り込める酸素が豊富にある環境をいいます。
地球に頻繁に落ちてくる普通コンドライト隕石が、S型小惑星から飛来してきた証拠をつかんだのです
● 大阪 大学
大阪大学 の 土`山明教授 らの グループ が X線マイクロCT(コンピュータ
断層撮影装置) を用いて、
微粒子 の 3次元形状 と 内部構造 を 詳細 に
調べました。また、どんな鉱物でできているかを特定し
それら鉱物 の 3次元的空間分布 を 明らかに しました。
角 が 鋭 い 粒 子
(左) と 丸 み を 帯 び た 粒子 (右) (提供:大阪大学/JAXA)
こ
の 他
● 京都 大学 ● 九州 大学 ● 名古屋 大学 ● 岡山
大学
● 福岡工業 大学 ● 財団法人 高輝度光科学研究センター
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【 は や ぶ さ プロジェクト 】 後 編
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